内分泌内科とは

内分泌疾患のイメージ写真

内分泌内科は、ホルモン分泌臓器である甲状腺や副腎などの異常を専門に扱う診療科です。ホルモンは、体の様々な働きを調節し、体の内外で起こる様々な環境変化に対応しています。そのため、ホルモンが多くなりすぎたり、少なくなりすぎたりすると、体の恒常性が損なわれてしまい、様々な症状や疾患を引き起こすようになります。

このように内分泌内科は、他の内科のように臓器特有の症状があるわけではなく、体の恒常性が損なわれて、体重減少、倦怠感、月経不順、高血圧などの非特異的な症状が出る疾患の診断、治療を行う科です。

例えば、日本人の高血圧の1割弱は副腎から分泌されるアルドステロンというホルモンの過剰分泌である原発性アルドステロン症が原因であり、その治療はアルドステロン産生副腎腫瘍の場合は腫瘍摘出、腫瘍でない場合はホルモン拮抗薬を選択するなど、一般的な高血圧と治療方針が異なります。
その他にも、甲状腺ホルモンの過剰分泌、頻度は少ないものの副腎ホルモン(アドレナリン、コルチゾール)、下垂体ホルモン(成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン)の過剰分泌でも、高血圧を呈することがあり、こうした場合の高血圧の治療はホルモンの分泌を抑制することであり、一般的な高血圧の治療とは異なります。

内分泌内科で扱う主な症状

  • 首の辺りが腫れてくる
  • 安静にしていても動悸が起こる
  • 暑がりになる
  • よく食べているのに痩せてくる
  • 体重が増えたり、減ったりする
  • 寒がりになる
  • 肌がカサカサする
  • 体がだるい
  • 下痢や便秘をしやすくなる
  • 月経不順になる、血圧が上がる、血糖値が上がる など

甲状腺とは

甲状腺は、喉仏の直下にあり、蝶が羽根を広げたような形をしている臓器です。とても小さく、重さは約10~20g程度しかありませんが、全身の新陳代謝などにかかわる重要なホルモンを分泌しています。このホルモンが過剰になると甲状腺中毒症といい、動悸、多汗、手の震え、イライラ感、眼球の突出などの症状がみられます。一方、甲状腺ホルモンの分泌が不足すると、気力の低下、便秘、体重増加、寒がり、肌のかさつきなどの症状が現れます。

内分泌疾患の中では甲状腺疾患が最も頻度が高いです。
甲状腺疾患の診断の多くは甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモンの測定、甲状腺関連自己抗体の測定、甲状腺エコーで甲状腺の血流、内部の性状、腫瘍の有無の観察などを行い、診断します。
当院では、甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン値を、必要に応じて、採血から1時間程度で院内測定し、当日に結果の報告が可能です。

主な疾患

バセドウ病

バセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰につくられる代表的な疾患です。自己の甲状腺に対する特殊な抗体がつくられることにより、甲状腺が過度に刺激され、新陳代謝が盛んになります。男女比は1:4くらいといわれており、とくに20~30代の女性に多くみられます。主な症状は、頻脈、動悸、息切れ、多汗、微熱、手指のふるえ、眼球突出、筋力低下などです。治療においては、主に抗甲状腺薬を投与しますが、お薬の効果が不十分なとき、副作用で投与を中止したときは、放射線治療か、甲状腺全摘術を検討します。

無痛性甲状腺炎

無痛性甲状腺炎は、甲状腺が何かしらの原因で破壊され、その中に蓄えられていた甲状腺ホルモンが血液中に漏れ出してしまう病気です。これに伴い、一過性の甲状腺中毒症となります。主な症状は、動悸、頻脈、多汗、手指の震え、体重減少などですが、多くは自然回復します。ただし、動悸や手の震えなどの症状が強い場合は、お薬による治療が必要となります。

亜急性甲状腺炎

亜急性甲状腺炎も、甲状腺に炎症が起こる病気のひとつです。詳しい原因は解明されていませんが、ウイルス感染によるものと考えられています。炎症によって甲状腺組織が破壊され、その中に蓄えられていた甲状腺ホルモンが血液中に漏れ出し、一過性の甲状腺中毒症状が起こります。甲状腺の辺りの痛みや腫れを伴います。患部を指などで押すと、強い痛みが生じます。患者さんによっては、高熱が出ることもあります。

橋本病

橋本病は、慢性甲状腺炎ともいわれ、甲状腺機能が低下する代表的な病気です。男女比は1:20くらいといわれており、とくに30~40代の女性に多くみられます。この病気になると、自己免疫によって甲状腺の一部が壊れてしまい、甲状腺ホルモンが減少します。そのため、無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘などの症状に悩まされます。全身が老けこんでいき、頭の働きが鈍くなるので、認知症のようにみえてしまうこともあります。治療に関していうと、甲状腺機能が正常な場合は治療をせずに経過観察することもあります。ただし、甲状腺機能が低下している場合は薬物療法を行います。

甲状腺腫瘍

大半が良性腫瘍です。当院ではエコー検査を行い、性状を確認し、悪性腫瘍を疑う場合は専門の検査を行える総合病院への紹介を行います。

副腎とは

腎臓の上方にある母指頭大の臓器で、外側の皮質、内側の髄質に分かれています。血糖値、血圧(塩分、水分量)などを調整して生体環境を適切に保つ役割のホルモンを分泌します。 副腎皮質ホルモン(ステロイド:コルチゾール、アルドステロン)が過剰分泌されると高血圧、糖尿病が出現し、不足すると血圧低下、低血糖で生命維持が難しくなります。

下垂体とは

脳の中心にある小指頭大の臓器で、成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、性腺刺激ホルモン、乳汁分泌ホルモン、抗利尿ホルモンといった様々なホルモンを分泌します。
これらのホルモンが不足すると血圧低下、活力の低下、無月経などが生じるため、必要に応じてホルモンの補充を要します。